日本を訪れる外国人が増えるなかで、自社の戦力となる外国人を採用したい企業は多いでしょう。ところが、「外国人を雇用したい」と思っていても、なかなか一歩を踏み出せないのも事実ではないでしょうか。

そこで、今回は国が用意している助成金や支援制度を紹介します。

一、助成金と補助金の違いとは?

「助成金」や「補助金」などは、返済の必要がない給付金であるという意味で同じように使われますが、これらは明確に違いがあることをご存知でしょうか?

「助成金」と「補助金」の違いは財源です。助成金は厚生労働省、補助金は経済産業省の管轄となります。外国人雇用に対する支援策は、厚労省、経済産業省それぞれで打ち出されていますので、外国人材採用にあたって有効活用できるとよいでしょう。

また、自治体の取り組みは外国人の生活を支えるものが多く、日本語の教育などに予算がつけられていることがありますので、こちらもよく確認しておくことをお勧めします。

二、外国人雇用のための助成金の一覧

厚生労働省の各種助成金を使うための条件は、雇用保険に加入している事業所であることです。このほか、賃金台帳などの整備が必要になります。申請に必要な書類やその整備の方法については、社会保険労務士にお尋ねください。

外国人の雇用に使える厚生労働省助成金は以下の通りです。国籍を問わず使える助成金が多く見受けられます

【人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)】

  • 目的:外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行うため。外国人労働者の職場定着のため経費の一部を助成。
  • 対象:事業主
  • 条件:外国人労働者に対する就労環境整備措置を新たに導入し、外国人労働者全員に対して実施。就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後、外国人労働者の離職率が10%以下であること等。
  • 金額:生産性向上の取り組みを支援する「生産性要件」が設定されており、これを満たしている場合は助成金が増額します。支給対象経費の2/3(上限額72万円)、満たしてない場合は支給対象対象経費の1/2(上限額57万円)です。
  • 手続き方法:管轄の労働局、ハローワークで申請。

【雇用調整助成金/中小企業緊急雇用安定】

  • 目的:雇用を継続させること
  • 対象者:売上が下がって従業員を休業させなければいけない事業者で、計画的に休業させ休業手当を支給する事業主。
  • 金額:従業員一人につき1日あたり8,330円が上限。原則として1年間で100日分、3年で150日分ですが、緊急対応期間中(令和2年4月1日~令和2年6月30日)に実施した休業については上限に参入しない。
  • 手続き方法:ハローワークへ来所、郵送、オンライン。

【トライアル雇用助成金(一般コース)】

  • 目的:職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者を雇用する場合。
  • 対象者:若者雇用促進法に基づく認定事業主
  • 条件:ハローワークや職業紹介事業者等の紹介後、一定期間試行雇用をした場合に助成金を受けることができる。
  • 金額:1人あたりの支給額が最大5万円(最長3ヵ月)を受給。
  • 手続き方法:管轄の労働局、ハローワークで申請。

【人材開発支援助成金(特定訓練コース)】

  • 目的:職務に関連した専門知識・技能の取得のための訓練中の賃金と経費の補助。
  • 条件:訓練計画を作成し、訓練開始日の1か月前までに管轄労働局かハローワークへ提出。
  • 金額:最大で50万円を補助(中小企業、200時間以上の訓練の場合)。
  • 手続き方法:管轄の労働局、ハローワークで申請。

【キャリアアップ助成金(正社員化コース・処遇改善コース)】

  • 目的:非正規雇用から正社員化をするなどの処遇改善に取り組むため。国籍に関する条件はありませんので、外国人社員にも適用可能で、賃金改定や、法定外の健康診断制度を創設、社内全体の制度の変更目的で申請可能です。
  • 対象:事業主
  • 条件:雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置き、キャリアアップ計画を作成、管轄労働局長の受給資格の認定を受ける必要があります。計画の期間内にキャリアアップに取り組んだ企業について、助成金が支給されます。
  • 金額:コースによって異なる。生産性向上の取り組みを支援する「生産性向上要件」を満たすと助成金額が増額します。生産性が向上した中小企業が最も高い金額を受給できるように制度設計されています。

【ものづくりマイスター・ITマスターによる実技指導】

  • 目的:ものづくりマイスターによる実地指導を受ける
  • 対象:中小企業や学校など
  • 金額:コーディネート費用は無料。ものづくりマイスターの派遣費用や指導に係る材料費は、規定の範囲内で、地域技能振興コーナーが負担。※詳しくは最寄りの地域技能振興コーナーへ問い合わせてください。
  • 手続き方法:最寄りの地域技能振興コーナーへ相談

三、外国人雇用のための支援制度

経済産業省が実施している主な支援制度例は以下の2つ:「製造業外国従業員受入事業」「国際化促進インターンシップ事業」。ただ、経済産業省の支援制度を使うための条件は、経済産業大臣の認定が必要になる傾向があります。

例えば、「製造業外国従業員受入事業」では「経済産業省の所掌に係る製造事業者は、当該事業者(特定外国従業員受入企業)の外国にある事業所の職員(特定外国従業員)へ特定の専門技術の移転等を実施するための計画(製造特定活動計画)を作成し、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。

そのため、応募を検討する前の段階で、以下の事項について確認をしてください。

  • 指定の業種であること
  • 経済産業大臣の認定を受けるための書類を作成する必要があること(書類作成に人員を割けるかどうか、もしくは行政書士に代書・代理申請を依頼するかも含めて検討が必要)

 

外国人の採用には手間や時間がかかりますが、国による経済的な支援策や、情報提供などの支援制度をうまく使いこなせば採用時の負担を軽くすることが可能です。

外国人雇用の際には、国の助成金や補助金などの支援制度を活用しましょう。